【前編】コクヨ株式会社が自社オフィスをリニューアル 〜ニューノーマル時代の新しい働き方〜

2021.06.01

SoloTimeの全店舗を設計しているコクヨ株式会社。2021年2月に品川オフィスおよび東京ショールームの自社ビルをリニューアルし、働き方の実験場「THE CAMPUS(ザ・キャンパス)」をオープンさせました。インフラ系の企業をはじめとした東京電力ホールディングスの営業も担当している、ファニチャー事業本部公共営業部の担当課長・吹田さんと、コーポレートスタッフ部門の役員秘書・川田さんに、リニューアルしたばかりのコクヨ株式会社の新社屋や、現在の働き方について語っていただきました。

SoloTimeの店舗デザインを手掛ける、コクヨ株式会社のこだわりについてのインタビュー記事はこちら

常に働き方をアップデートして、お客様へ提案する

ーコクヨ株式会社は、これまでどのような働き方改革をされていましたか?

川田さん:当社はオフィス家具を作っている会社なので、ショールームでそれをお客様に見せるときに、自分たちの働き方を一緒に見ていただくような展示方法として、1969年から「ライブオフィス」を続けています。ここで自らが働く実体験を通して課題解決した内容を、お客様に提案することで説得力が増し、そこから生まれるソリューションがあると考えています。
この取り組みの中で、無線LANが普及してきてノートパソコンがあれば働けるようになった1990年頃から、当社は一早く席は決めずに好きな場所で仕事をするフリーアドレスも始めましたし、会社としては働き方を常にアップデートしながら、より自由な働き方を進めています。

左から役員秘書の川田さん、ファニチャー事業本部 公共営業部担当課長の吹田さん

吹田さん:僕が入社した2007年にはフリーアドレスが定着していました。海外の先進的なオフィスや働き方を研究して自分たちが実験し、お客様へ提案するためにフリーアドレスを導入したそうです。
コロナ渦において、コクヨグループ各オフィスの出社率(在席率)はおおよそ50%で運営。品川オフィス改修の際には感染拡大防止対策で密にならないようにしたこともあり、オフィスの執務エリア座席数を、在籍社員数に対して約50%の設定としています。そして、SoloTimeなどテレワークオフィス利用対象社員のうち月に1回以上、主に首都圏のテレワークオフィスを利用した社員が約30%です。また終日在宅で仕事をした社員が約40%、出社率も約40%でした。(2021年3月時点)

ー品川オフィス及び東京ショールームを改修した経緯や、コンセプトを教えてください。

川田さん:改装計画自体は2019年からスタートしました。働き方をアップグレードさせるオフィスにしようという目的にプラスして、社外の人たちと繋がりを持てる場所を作ろうと考えました。そうすることで、自分たちのクリエイティビティやイノベーションに繋がるのでは?と思ったからです。
リニューアルしたオフィスは “みんなのワーク&ライフ開解放区”をコンセプトとし、「THE CAMPUS」と名付けました。オフィスは、当社社員が働くオフィス部分「ライブオフィス」と、お客様や地域の人に自由に使っていただけるエリア「パブリックエリア」に分かれています。パブリックエリアでは、当社製品を扱ったショップや、心身を満たす食の提供、感性に訴求するアートやグリーンな空間を通して、働くことや暮らすことをより豊かにする、学びや気づきを提案しています。


地域の人も利用できるアートな屋外空間/ドリンクを提供するコーヒースタンド


コクヨの新製品を試すことができるショップ/無線LAN完備のワークスペース


キッチンカーの営業は平日11:00〜14:00。社員はもちろん地域の人も気軽に購入できる

スパイスが効いたキーマカレーやタコライスが人気

ーパブリックエリアを社外の方に利用してもらうことで、どのような価値が見えてくると思いますか?

吹田さん:これからは、コクヨからのさまざまな発信がお客様に求められると思っています。お客様自身が新しい働き方をしないといけませんし、新しいビジネスを作っていかなければなりません。僕たちも新しい価値を提案し、お客様と一緒に考えていく必要があると思っています。新しいことをするためにはインプットが大事だと思っていて、今まで通りオフィスにこもって同じ社員と仕事をするだけでは、新しいものは生まれません。
THE CAMPUSのように社外の人と繋がれる場所ができたことで、これまでの出会いでは得られない情報収集もできると思っています。そういった意味で、幅広い経験が得られて新しい情報発信の糧になると感じています。

川田さん:パブリックエリアを地域の人に利用してもらうことで、社会と会社、会社と個人の関係を見つめ直すきっかけになると思っています。
世の中における働き方の課題解決を中長期的視点で実践していく場としてTHE CAMPUSを作っているので、社外の人とコミュニケーションを取りながら、新しい働き方の実験ができると思っています。このような取り組みを社員一人ひとりが認識して、そこから生まれるソリューションを発信していく予定です。

デジタルワークプレイスを取り入れ、仕事を効率化

ーコクヨ株式会社の社員の方々が働いている「ライブオフィス」に導入した、デジタルツールについて教えてください。

川田さん:ライブオフィスは、人が交わるのを重視した上で感染対策の考え方も踏まえました。感染対策として、自社製品の飛沫・エアロゾルを吸引するテーブル「エアトリーブ」を会議室に設置したり、デジタルの仕掛けを取り入れたりしています。
デジタルの仕掛けとしては、社員の位置情報を可視化する「beacapp(ビーキャップ)」を導入し、混雑状況が家からでもわかるようになり、どこの席が空いているか可視化されました。さらに、スマートフォンから会議室や座席を予約できるクラウドサービス「ACALL(アコール)」も導入しました。

beacappイメージ

ACALLイメージ

ー「beacapp」や「ACALL」を導入したことで、どのような働き方に変化しましたか?

吹田さん:僕は外出先からオフィスに戻ってくるにしても、スマートフォンでbeacappを確認して後輩がいる席に戻るようにしています。戻ったらすぐに集まって仕事をすると捗りますしね。外出先からACALLであらかじめ会議室を予約しておいて、会社に戻ったらそこにチームで集まって仕事をするようにしています。beacapp導入前は、今どこにいるのかを都度電話で確認していたのでその手間がなくなり、誰がどこにいるのか可視化することで、集まりやすくなりました。
あと、ACALLで会議室を事前予約することができるので、帰ってきて会議室を探す手間もなくなりました。以前はパソコンで会議室を予約していましたが、ACALLが導入されてからは、移動しながらスマートフォンで予約しています。効率的に仕事ができるようになって仕事の質もレベルアップしていると思います。

川田さん:当社では2020年からスタートした、20%チャレンジという取り組みがあります。社内副業のような仕組みで、自分がメインでやっている事業以外のプロジェクトにチャレンジできる制度です。目的は、社員が違う部門から得られる成長と、事業部外のアイデアを入れていくことです。
さまざまな部署のメンバーが集まる際、会議室を予約したり誰がどこにいるのか把握したりすることに時間を費やしていたところを、beacappやACALLを使いこなすことで、会議を効率的に進められるようになりました。当社としても、デジタルの併用をポジティブに受け止めています。

フロアごとにテーマを。新ライブオフィスでの新しい働き方

ー8階「集う」フロアの特徴を教えてください。

吹田さん:このフロアは、チームやグループ単位で集まってディスカッションをしたり、チームでお客様の提案書を作ったりするために作られました。チームでお互いを高め合っていく、チームで顧客課題や社会課題を解決していくような、チームアップのために集うフロアです。僕たちは、3人以上のチームや社内外から5、6人以上集まって仕事をすることが多いので、そのためのチームが集まりやすいフロアができたというのはとても便利ですね。ACALLで席を予約するエリアもあります。

議論に適したホテリングエリアは、仕切りをカーテンにして可動什器を使うことで、人数や用途に応じたスペースを作ることができます。また、お互いのミーティングを見える化することで、会議の仕方を学ぶこともできます。さらに、どのホテリングエリアにもホワイトボードとディスプレイが置いてあり、ホワイトボードに物事を描きながら打ち合わせができますし、ディスプレイがあるので、オンラインの人が入った会議がとてもやりやすくなりました。

僕は週の1/3はこのフロアにいます。後輩やチームと一緒に効率よく仕事を進めよう、より難易度の高い仕事をしようと思うと、1人で仕事をするよりみんなで集まって一気に課題解決したほうが仕事の質が上がりますからね。

ー6階「遊ぶ」フロアの特徴を教えてください。

吹田さん:ここは、イベントや発表会などができるステージ、ランチやコーヒータイムを楽しめるキッチン、運動や部活などが行える広場など、多様な目的で集まる多様な人同士の、仕事を超えたオープンなコミュニケーションやチャレンジを促すフロアです。20%チャレンジに使ったり、同僚や後輩とかとご飯を食べたりもしています。社内の事例共有や1on1のミーティングで得た情報をここで発信しつつ、情報を吸収するためのエリアになっています。

川田さん:フロアの真ん中にスクリーンがあり、発信できる場所があるんですね。先日はその場所を使って、役員から社外の販売店様へ向けての年間表彰会や、取引先の方々へのアワードなどの配信もしました。また、他の事業部門の取り組みや会社の動きを知り、そこから新しい発見が生まれる場所でもあります。ネーミングも「遊ぶ」にすることで、親みやすく立ち寄りやすいような雰囲気にしています。
私たちはサウナ部なんですけど、気軽に仲間が集いやすいこのフロアを今後利用していく予定です。いつも、最近どこに行ったかとか新しくできた施設の話などの情報交換をしていて、そこから新たな仕事の提案にも繋げています。

【後編に続く】

後編は、引き続きコクヨ株式会社ライブオフィスの5階「整う」フロアと、4階「捗る」フロアをご紹介します。そして、SoloTimeをはじめとするテレワークオフィスと、センターオフィスをどのように使い分けるとよいのか、そこから見えてくる新しい働き方についても語っていただきます。